設計の仕事は“線”を引く事。線を引く、それは“あっち”と“こっち”を創る事、
創った“場所”には個性が生まれ、今度はそれらの出会いをプロデュースする、その繰り返し。
その線が国境であれば国ができて、“出会い”を間違えれば“戦争”になる。
そんな妄想をしながら、“場所”を創りこみ、それぞれの関わりを演出する。
楽しくて夢中になれる時間で、この仕事が向いていると感じる時である。
この時間を繰り返し建物にしていくのだが、その過程で活躍するのが要素である。
建築の要素には、必要から生まれた役割がある。
“四季”があり“靴を脱ぐ”世界でも珍しい文化の日本、そこに根付いて成長してきた要素。
例えば庇、庇には木で出来た建物を守り、自然を緩和しながら取り込む役割がある。
四季があり、気象の変化が激しい日本では重要な要素の一つである。
そんな数ある要素の中でも、一番手強いのが“窓”である。
外気を自由に遮断でき、解放感があり、デザイン上でもとても重要な要素なのだが、
熱が伝わりやすく、結露や室温分布に大きな影響を与える窓、
『窓を制する者は建築を制する』なんて言葉があったような。
大きな開口部は見た目には良いが、方角を間違えると暑くて不快になり、
結露や熱還流を抑えるのに費用がかかる、外部からの視線も考慮しなければならない。
当然、庇とのタッグは必須になり、日影計算なども用いて計画するのだが、
ベタっとする窓周辺は外観に大きく影響する為、難しく一番頭を悩ませる。
煮詰まると全て無くしたくなる、庇も窓も色も無ければどれだけ楽だろうか、
白い四角、あとはスタイルを整えるだけ・・・そんな訳にはいかない。
ベストを模索して、色々な要素をバランスよく組み立てながら線を引いていく。
こんな葛藤の中で仕事を進めていくのだが、思い続ける事が一つある。
それは、幾ら理論で武装して熱く語っても、感じ取れない、居心地が悪ければ意味がないという事。
建物は五感で感じる物、『感じる事が全て』の世界だと思う。
まだまだ未熟ではあるが、“求める体感を創造する”を磨き、“建築”で社会に貢献できると嬉しい。
室田 高義
Murota Takasyoshi
経歴
1973年 福井県福井市生まれ
ゼネコン・大工・設計事務所勤務を経て
1999年 Atelier5一級建築士事務所 設立
2011年 株式会社Atelier5 設立